昔から、「研修講師を外注せず、社内で育てたい」「人材育成もコスト削減したい」という声が多くあります。特に中小企業では、外部講師への依頼費用が負担になりやすく、「社内でやれないか?」という問いが立ち上がるのは当然の流れです。コロナのような不景気になればなおのことです。
しかし、本当に社内講師で育成は可能なのか。今「研修の内製化」のメリットと落とし穴を整理しつつ、内製で乗り切るか、外部を活用すべきか、判断の軸をご提案します。
社内講師のメリット
まず、社内講師を育てる/任命することで得られるメリットには以下です。
- 会社の文化や実務に即した内容を伝えられる
- 日常的なフィードバックやOJTと連動しやすい
- 社内のロールモデルとして説得力がある
- 外注コストがかからない(ように見える)
「普段から面倒を見ている上司がそのまま研修を担う」ため、一貫性があり、研修がより実践一回内容が含まれるようになります。
社内講師のデメリット
「社内でやればいい」が通用しないケースも多く存在します。
教えるプロではない
「伝え方」「設計」「評価」の観点で、実務経験者と教育のプロには明確な差があります。
「できる人が教えても、なぜか響かない」「教えるのが下手だと逆効果」となるリスクは無視できません。
必ずしも仕事ができる人=教えるの上手 ではないからです。
さらに言えば、前に登壇する経験は普通の会話とは異なります。
時間が確保できない
現場の管理職やベテラン社員に講師を任せたとしても、普段の業務に追われる中で、資料準備・事前打ち合わせ・振り返り評価まで行うのは現実的ではありません。結果、効果的な内容にすることが果たしてできるのかは疑問が生じやすいです。
社内政治が入りやすい
「この人の話なら聞ける」「あの人じゃ反発が出る」というように、社内講師には“関係性バイアス”がつきまといます。特に評価権限を持つ上司が講師となると、受講者は“本音”で臨めなくなります。研修の効果を最大化するために受講生にはオープンマインドになって頂く必要があります。
体系化ができない
研修とは、本来求めるゴールに向かってのきっかけであるべきです。ただ、それが個人の感覚になる場合があり、再現性のないことを教えたり、人によって話す内容がばらばらになってしまうことがあります。
どこまで内製、どこから外注?
では、どう判断すべきでしょうか。以下のような線引きが現実的です。
研修テーマ | 社内内製がおすすめ | 外部講師活用がおすすめ |
---|---|---|
業務マニュアル研修 | ◎(社内のほうが正確) | △ |
自社商品や工程説明 | ◎(実物も見せられる) | △ |
コンプライアンス研修 | △(法改正の把握に注意) | ◎(最新情報と事例が豊富) |
ビジネスマナー・接遇 | △(現場で教えがち) | ◎(第三者視点の型が有効) |
新入社員研修(導入) | △(現場の視点に偏る) | ◎(社会人意識の切り替えに効果) |
中堅社員向けロジカル研修 | ✕(設計に専門性が必要) | ◎(訓練型で効果が出やすい) |
「ハイブリッド化」が一番の現実解
結論として、社内でできることと、外部に任せるべきことを判断しましょう。
- 自社独自の内容(制度、製品知識など)は内製
- 考え方や社会人としてのマインドセット、汎用スキル訓練は外部講師に依頼
- 定着や実践支援は社内フォローアップで補完
というように、分業型設計が最も再現性が高く、効果も長続きします。
「研修を教える研修」の存在
弊社では、社内講師を育てたい企業様向けに「社内講師育成研修」もご用意しています。
- 講師としての立ち振る舞い
- 資料設計と構成ロジック
- 話し方やワーク設計のコツ
- 参加者の反応に応じたアレンジ力
こういったスキルを、外部講師として何百回と登壇してきた経験から体系的に伝授します。
おわりに
研修講師を誰が担うかは、人の問題ではなく組織の仕組みの話です。
「うちには教えられる人がいない」ではなく、どう講師を育てるか、講師の立ち位置はどうかが重要です。
「人に頼らない、仕組みでまわる育成体制」をご希望の企業様には、弊社が全面支援いたします。
研修内製化の第一歩に、ぜひ一度ご相談ください。