春の訪れとともに、多くの企業で新入社員が社会人としてのスタートを切ります。
期待を背負いながら入社した彼らの中には、数日〜数週間で職場を離れてしまうケースもあります。
「うちの新人が辞めたらしい」
そんな声を耳にすると、現場では少なからずショックが走ります。
「本人の問題」では終わらせない
辞めてしまった理由を、「最近の若者は根性がない」「社会の厳しさを知らない」と片づけるのは簡単です。
よくあるのが、「本人がやる気なかった。うちの会社についてこれなかった」という声です。もちろんすぐに皆さんのようには仕事はできません。これは当たり前のことです。
しかし、それだけで済ませてしまえば、また同じことが繰り返されるだけです。
本当に見るべきは、「環境に問題はなかったか」「自分たちの受け入れ方に改善の余地はなかったか」という点です。
職場の受け入れ態勢はどうだったのか
新入社員にとって、配属先の雰囲気や最初の印象はその後の定着に大きく影響します。
上司や先輩が声をかけるタイミング、業務指示の出し方、質問しやすい空気など、ちょっとした要素が「ここにいてもいい」という安心感につながります。
とはいえ、それらは配属後に個人が気を利かせてできることばかりではありません。どれだけ気を配っても、一日中一緒にいることはできませんし、まだ出会って数日というところではその人の人柄も性格も個性もわかりかねます。
実は、最初の土台づくりがすべてを左右する
ここで立ち返りたいのが、「新入社員研修」の在り方です。
そもそも入社直後に、社会人としての考え方・行動・姿勢の“軸”がどれだけ植え付けられていたか。
自ら考えて動くこと、すぐに答えが出ない中でも粘り強く取り組むこと。
そういった“ビジネスの基礎体力”が、身につくような導入研修になっていたでしょうか?
叩き込みの意義は、「潰す」ことではなく「支える力を鍛える」こと
「叩き込む」というと、厳しく鍛え上げるようなイメージがあるかもしれません。
しかしここでいう叩き込みとは、“土台を築くための徹底的な意識づけ”です。
・社会人とは何か
・会社とは何のためにあるのか
・その中で自分がどう価値を生み出すか
この軸がないまま現場に出てしまえば、小さな不安や違和感で心が折れてしまっても不思議ではありません。
離職の背景には、「研修の質」がある
辞めてしまった事実に対し、現場の受け入れ態勢やフォローの重要性が語られることは多いですが、
実はその前段階──新入社員研修の設計や運営にも、見直すべきポイントが潜んでいます。
「会社とはこういう場所なんだ」「この程度の困難には耐えられる自分でいよう」
そう思えるベースがあるかないかで、1年目の見え方はまったく変わります。
結論:叩き込みが足りなかったのかもしれない
もし、新入社員がすぐに辞めてしまったのだとしたら。
もしかすると現場だけでなく、導入時の研修においても、“覚悟”と“耐性”を育む仕掛けが不足していたのかもしれません。
研修は、知識やマナーを教える場ではありません。
社会人としての心構えを、真正面から伝える最後のチャンスです。
「なぜ辞めたのか?」ではなく
「辞めない状態をどうつくるか?」
その視点で、次の新入社員に向けて今できる準備を、見直してみませんか。