ゴールデンウィーク、お盆休み、年末年始など、社員にとって長期休暇は心身のリフレッシュの機会です。
しかし、長期休暇後に意外なほど多くの企業で聞かれるのが、「休み明けに突然退職を申し出られた」という声もあります。特に昨今は、労働市場の流動性が高まり、転職・退職へのハードルが下がったことも背景にあります。今回は、長期休暇明けの退職の背景と企業が取るべきメンタルフォローアップ施策について考察します。
退職の理由
普段の忙しさの中では、自分の働き方やキャリアについて深く考える余裕はあまりありません。
しかし、長期休暇によって職場から物理的・心理的に距離を置くことで、「本当にこの仕事を続けるべきか?」という疑問が芽生えやすくなります。
また、休暇中に家族や友人と過ごす時間が増え、客観的な意見を聞く機会が生まれます。「今の職場は本当にあなたに合っているの?」といった言葉が、退職の背中を押すこともあります。
他にも、休暇中にSNSや求人情報を閲覧することで、他社の働き方や待遇と比較し、不満が膨らむケースも少なくありません。最近では副業やフリーランスといった柔軟な働き方への関心も高まっており、転職の選択肢が増えています。
企業にとっての痛手
このような休暇明けの退職は、企業にとって二重のダメージとなります。
特に中堅社員や専門スキルを持つ社員が抜けると、現場のオペレーションに大きな支障が出ます。
また、突然の退職は残されたチームに心理的な負担を与え、他の社員のモチベーションにも影響を与えます。「次は自分も…」という連鎖反応が起こる恐れもあります。
3つの予防策
では、企業はこのリスクにどう備えればよいのでしょうか。
長期休暇前の「個別面談」
休暇前に、社員一人ひとりと簡単な面談を行い、業務状況や不安、不満などをヒアリングします。この時点で社員の不安を察知し、早期に対応策を検討することが重要です。
柔軟な働き方・キャリア相談の機会提供
特にキャリアに迷いが生じやすい30代〜40代社員向けに、キャリアパス相談やジョブローテーションの選択肢を用意することが有効です。また、柔軟な働き方(リモートワーク、副業許可など)の導入も離職防止に寄与します。
長期休暇明けの「メンタルフォローアップ」
最も重要なのは、長期休暇明けのメンタルフォローアップです。休暇から復帰した直後は、職場への再適応に心理的負担がかかりやすいタイミング。特に最近は「休み明けうつ」や「五月病」とも言われる状態に陥る社員も珍しくありません。
具体的なメンタルフォローアップ施策例
・復職初週は業務負荷を軽減し、リハビリ的に仕事を進める
・直属の上司やメンターによる軽いカウンセリングを実施
・産業医や外部カウンセラーへのアクセスを促す
・チーム内での「雑談の時間」や「ランチミーティング」を設定し、心理的なハードルを下げる
また、人事部門が中心となり、休暇明け2週間以内に全社員向けのアンケートを実施し、復職後の心理状態を把握する取り組みも効果的です。
まとめ
長期休暇明けの退職は、社員の「変化のサイン」を企業が見逃した結果とも言えます。しかし、休暇明けこそが、社員と企業の関係性を見直す好機でもあります。長期的な人材定着と組織の健全な成長のために、メンタルフォローアップを制度として整備することは、単なる福利厚生を超えた「経営戦略」の一つと捉えるべきでしょう。
御社でも、次の長期休暇明けを迎える前に、ぜひ今から準備を始めてみてはいかがでしょうか。